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彩の国さいたま芸術劇場 |

ダンス

【シャンソンから観る『En Piste−アン・ピスト』】ボワヴァン/ウバン/ラリュー『En Piste−アン・ピスト』からシャンソンをご紹介!

2015年10月21日

フランス・ダンス界の3人の異才が、
’68年〜80年代を映し出すシャンソンでその時代を踊る——

 

『En Piste−アン・ピスト』は「(舞台に入って)さあ、始めるよ!」という意味合いのフランス語。


ベテランの振付家ドミニク・ボワヴァン、パスカル・ウバン、ダニエル・ラリューが集まり、彼らの青春時代に街中に流れていたバルバラ、レオ・フェレ、セルジュ・ゲンスブール、エディット・ピアフなど、1968年〜80年代のフランスを映し出す数々のシャンソン(フランスの歌謡曲)に、現在の思いを乗せ踊ります。



このページでは、作品で使用される全16曲のシャンソンの中から、厳選された4曲を順にご紹介します!
数々のシャンソンの背景と共に、より深く味わい楽しんでいただきたい『En Piste−アン・ピスト』。
どうぞお見逃しなく!



『En Piste−アン・ピスト』
11月6日(金)19:00開演/7日(土)15:00開演
彩の国さいたま芸術劇場 小ホール

公演詳細ページはこちら


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第一弾
◆BARBARA —Mon Enfance バルバラ—私の幼いころ◆

シャンソンの女王として知られるバルバラは、歌手としてばかりでなく作詞家そして作曲家としても才能を放ち、
生涯250曲ほどの曲を遺しています。
両親がユダヤ人で幼少のころナチの迫害に遭い、その体験が多くの作品に影響を与えているといわれています。
この曲の歌詞には、ひとりの女性が子ども時代を過ごした街で失われた記憶をたどり、あふれ出した思い出が描かれ、
ドミニク・ボワヴァンのソロは その歌詞をなぞるジェスチャーだけでなく、楽しい思い出と哀しい思い出の明暗、こどもの無垢で痛々しいまでの感受性を描いているかのよう。


◎下記で、今回ご紹介した場面の一部をご覧いただけます。
https://www.youtube.com/embed/XDjNpl5oPf8

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第二弾
BourvilLe p’tit bal perdu ブールヴィル失われた小さなダンスホール

歌うコメディアンとも呼ばれるブールヴィル(1917-1970)は、映画『史上最大の作戦』『大追跡』のコミカルな演技から、『仁義』で見せたドラマチックな演技までこなすフランスの名優。1958年版映画『レ・ミゼラブル』にはテナルディエ役で出演しています。

映画だけでなくオペレッタ、オペラ、ラジオなどでも活躍したブールヴィルは300近い曲を遺していますが、中でも有名なのが1961年に発表した「Le p’tit bal perdu/失われた小さなダンスホール」。戦争が終わりがれきだらけのダンスホールで踊る二人の恋人たちを描いた1曲です。

この曲と言えばフィリップ・ドゥクフレが草原に置いたテーブルに一人の女性と並び、手振りだけで踊る映像を思い浮かべる方も多いことでしょう。この女性こそ今回来日するパスカル・ウバン。『En Piste−アン・ピスト』ではウバンがソロでこの曲を踊りますが、途中から登場するボワヴァン、ラリューにもご注目!


◎下記で、今回ご紹介した場面の一部をご覧頂けます。
https://www.youtube.com/embed/MY3UXfv3aJk

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第三弾
◆Les frères Jacques−Faut tout ça レ・フレール・ジャック−あれもこれもみんな

レ・フレール・ジャック(ジャック兄弟)は日本では馴染みのない歌手ですが、1946年〜82年にフランスで活躍したヴォーカル・カルテット。
と言ってもハーモニーでしっとりと歌い上げるというより口ひげに山高帽、タイツ姿を名刺代わりに、マイムのような動きを駆使しプレヴェールやゲンスブールなどの歌をコミカルかつシニカルに歌うオジサン4人組です。(ちなみに名前の由来は「バカのふりをする」をいう意味の“Faire le jacques(フェール・ル・ジャック)”からとか。)

『En Piste−アン・ピスト』のオープニングを飾る「Faut tout ça−あれもこれもみんな」では、ボワヴァン、ウバン、ラリューの3人のダンサーがレ・フレール・ジャックよろしく口ひげをつけ、幕開けを告げるピエロのような格好で登場。

真面目な顔で様々な身体言語をユーモラスに織り交ぜる3人のかわいらしい(?)姿や、快活なマーチのリズムに楽しいことが起こりそう、とワクワクさせられますが、そんな雰囲気とは裏腹に、歌われている内容は「あれもこれも必要なんだ」という1950年代の急激な経済成長により生み出された消費社会を皮肉るもの。一つの動詞で二重の意味を含ませ、フランス的な風刺をきかせた実はひと癖ある曲なのです。そんな曲を1曲目に選ぶあたりがボワヴァン、ウバン、ラリューのエスプリ。

むしろ、これからタダ事でないことが起きるのかも!という期待が高まりますね!
 

◎下記で、今回ご紹介した場面の一部をご覧いただけます。
https://www.youtube.com/embed/RxhkTqgwfVI

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第四弾
◆Nino Ferrer−Mirza ニノ・フェレール−ミルザ◆
イタリア人の父、フランス人の母を持ち、フランスで絶大な人気を誇った「初代ブルー・アイド・ソウルの代表格」の異名をとるニノ・フェレール。

その名のとおりファンクやソウル、ブルースなどの音楽をフランス語とイタリア語で歌ったシンガー・ソングライターです。ソウルフルな歌唱力はまるで本場のブラックミュージックのよう。日本では1999年に元ピチカート・ファイブの小西康陽が監修したベスト盤も発表されています。

1965年発表の「Mirza−ミルザ」は彼の最初のヒット曲。かき鳴らされるオルガンとシャウトするニノの歌声が印象的なナンバーです。タイトルの「Mirza−ミルザ」とは犬の名前のこと。手足の長いボワヴァンがキレのあるダンスで、ミルザを探し回る男を、時にはミルザを熱演する姿はかっこいいのに、どこかユーモラス。
ご注目ください!


◎下記で、今回ご紹介した場面の一部をご覧いただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=6v5HVFRCb-M

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第五弾
◆L. Ferré — I n'y a plus rien レオ・フェレ—彼はスケートが上手い◆

さっそうと氷の上を滑っているかのようなポージングで始まるのは、その名のとおり「彼はスケートが上手い」。この彼のスケートの上手さときたら、しなやかな針のような見事な滑りで、スピードも目に見えないほど。遠くへ向かって滑り出した彼は、どんどん速度をあげ、とうとう見えなくなって、今日になっても姿は見えない——。

この曲の原詩は、19世紀末のフランスを代表する詩人の1人、ポール・ヴェルレーヌ。ともに象徴派を代表する詩人ランボーとの関係は有名で、映画「太陽と月に背いて」にも描かれています。この曲もレオ・フェレのアルバム「ヴェルレーヌとランボー」に収録されている1曲です。

3人が揃って踊るこのシーンには、ほっとする美しさがあり、前後の曲とのバランスに巧みな構成力を感じます。振付にはバロックダンスが取り入れられ、まるで床に何かを描いているかのように複雑に運ぶ足もとのステップにもぜひご注目ください。


◎下記で、今回ご紹介した場面の一部をご覧いただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=zrg6eYkJf_8

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