Vol.118
2025年12月号
埼玉会館
2026年3月
18日(水)10:30/14:30/18:30
【問い合わせ先】埼玉映画ネットワーク 048-762-9407
※前売券なし・当日現金支払いのみ・全席自由・各回入替制・整理券制
◎3/18(水)14:30の回終了後、アフターセミナー開催!
百年後のあなたへ—
これは、女性の参政権を求めて立ち上がった“名もなき花”の、真実に基づく物語。

1912年のイギリス。ロンドンでは、当時の政権に対して女性の選挙権を要求する運動が先鋭化していた。50年に及ぶ平和的な抗議が黙殺され続け、カリスマ的リーダーであるエメリン・パンクハーストが率いるWSPU(女性社会政治同盟)は、“言葉より行動を”と過激な抗争を呼びかけていた。その一方で人を傷つけないことを方針のひとつとする穏健派も存在した。現代社会の深刻な問題となっているテロ行為とは一線を画す、理性に拠る活動だったことが知られている。階級を超えて連帯した女性たちの願いはやがて大きなムーブメントとなり社会を変えていった—。実話に基づく本作は、そんな女性たちの勇気ある行動を描出した感動作だ。
監督のサラ・ガヴロンは語る。「(原題の)“Suffragette=サフラジェット”という語彙は、女性の参政権を求める活動家の蔑称としてイギリスのマスコミが作り出したもの。やがてその呼び名が女性運動を指す言葉として定着した。彼女たちは電話線を切断し、郵便ポストや家屋を爆破し、刑務所へ送られるとハンガーストライキを行った。こんな驚異的でパワフルな物語を今までどうして誰も映画化しなかったのか、不思議だった」。ガヴロン監督のデビュー作『Brick Lane』で出会ったプロデューサーのアリソン・オーウェン、フェイ・ウォード、そして『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』の脚本家アビ・モーガンらが再結集。強力な女性チームが、これからの百年も語り継ぐべき物語を完成させた。

参政権運動の波に呑まれていく主人公モード・ワッツ役には、チームのファーストチョイスだったキャリー・マリガン。『17歳の肖像』でアカデミー賞の候補になり、話題作へのオファーが続く若手筆頭の演技派だ。守ってあげたくなるようなベビーフェイスの持ち主にして、繊細な感情表現で役に魂を吹き込む稀有な女優でもある。洗濯工場で過酷な労働に従事していた既婚女性が、なぜすべてを捨てて“サフラジェット運動”に身を投じたのか。広範囲なリサーチから生み出されたモードという人物を通して、観客は心震わせる日々を追体験することになる。その転換点のひとつに、彼女が公聴会で証言するシーンがある。「なぜあなたはここにいるのか」と問われたモードは、沈黙の後で「もしかしたら他の生き方があるのでは……」と、緊張しながらも真っすぐな視線で答える。7歳からパートタイマーとして工場で働いてきたモードの“運命は自分の意志で変えられる”という目覚めの瞬間を、キャリーはたとえようもなくエレガントに示した。思想も教養も富もない一人の母親が闘いの中に見出したもの、それは“犠牲”ではなく、未来への“希望”だった。
共演者にも当代の実力派が顔を揃えた。モードの夫に『007 スカイフォール』、『007 スペクター』の“Q”役ベン・ウィショー。同志のイーディスを演じたヘレナ・ボナム=カーターは、 参政権運動を弾圧したその当時の首相の曾孫にあたる個性派。WSPUを結成したエメリン・パンクハーストには3度のオスカーに輝くメリル・ストリ-プがキャスティングされた。演説だけの短い出演シーンにも関わらず、その華やかな存在感をスクリーンに刻印する。

この物語は、一見“女性による女性のための映画”のように見えるかもしれない。けれども監督たちは、立場や信条の違う三人の男性を合わせ鏡のように描くことで、普遍的なテーマを追求していった。一人は、サフラジェットたちを支援するイーディスの夫。彼は自宅の薬局を集会所として提供し、大臣の別荘の爆破計画にも運転手として加わる。逆に保守的な多数派として描かれるのが同じ工場で働くモードの夫だ。同僚に揶揄された彼は妻の行動を恥じ、母親から子供を引き離そうとする。三人目は活動家を制圧する側のベテラン警部。しかし捜査を通して彼は闘いの根本を理解していく。彼女たちの運動に反対していた大半は、社会の調和や男女の役割が崩壊することを恐れた人々だったという。
本作の舞台からおよそ百年後の2016年。5月に台湾で初の女性総統が誕生し、8月には小池百合子東京都知事が就任した。そしてアメリカでは女性初の大統領を目指し、ヒラリー・クリントンが“ガラスの天井”を打ち破ろうとしている。日本では18歳以上に選挙権が引き下げられ、6月に最初の参議院選挙が行われた。私たちが“当たり前”の権利として享受する男女平等の普通選挙権は、世界中に存在したモードのような“名もなき花”の努力や苦労によってもたらされたといえるだろう。彼女たちの思いは脈々と現代に受け継がれ、社会に根付いている。本作は、平凡な工場勤めの母親が初めて自分の足で立ち、自身の人生を切り拓いていったように、私たち一人ひとりの可能性を呼び起こす物語でもある。過去の歴史を振り返るだけではなく、現在を知り、未来を創るために……。
“緑=希望、白=清らかさ、紫=尊厳”。3色のシンボルカラーの花束を胸に、凛として咲いたサフラジェットたち。彼女たちの花束は、今を生きるすべての人へのかけがえなき贈り物なのだ。(2017年 日本初公開当時)

1912年、ロンドン。劣悪な環境の洗濯工場で働くモードは、同じ職場の夫サニーと幼い息子ジョージの3人で暮らしている。
ある日、洗濯物を届ける途中でモードが洋品店のショーウィンドウをのぞき込んでいると、いきなりガラスに石が投げ込まれる。女性参政権運動を展開するWSPU(女性社会政治同盟)の“行動”の現場にぶつかったのだ。それが彼女と“サフラジェット”との出会いだった。
同じ頃、女性参政権運動への取り締まりが強化され、アイルランドでテロ対策に辣腕をふるったスティード警部が赴任してくる。彼は歴史上初となるカメラによる市民監視システムを導入し、無関係だったモードもターゲットの1人として認識されてしまう。
やがてモードに大きな転機が訪れる。下院の公聴会で証言をすることになったのだ。工場での待遇や身の上を語る経験を通して、初めて彼女は“違う生き方を望んでいる自分”を発見する。けれども法律改正の願いは届かず、デモに参加した大勢の女性が警官に殴打され、逮捕された。そんな彼女たちを励ましたのが、WSPUのカリスマ的リーダーであるエメリン・パンクハーストの演説だった―。
◆アフターセミナー
それは未来への“希望”だった
◇日時:2026年3月18日(水)14:30の回終了後
◇場所:埼玉会館 小ホール
◇ゲスト:本山央子(もとやま・ひさこ)さん|アジア女性資料センター理事/お茶の水女子大学 ジェンダー研究所リサーチフェロー

| 日時 | 2026年3月 |
|---|---|
| 会場 | 埼玉会館 小ホール |
| 作品情報 | 監督:サラ・ガヴロン 脚本:アビ・モーガン(『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』) 出演:キャリー・マリガン(『華麗なるギャツビー』)、ヘレナ・ボナム=カーター(『アリス・イン・ワンダーランド』)、ベン・ウィショー(『007 スペクター』)、メリル・ストリープ(『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』) 2015年/イギリス/英語/1時間46分/シネマスコープ/カラー/日本語字幕:寺尾次郎 提供:KADOKAWA、ロングライド 配給:ロングライド © Pathe Productions Limited, Channel Four Television Corporation and The British Film Institute 2015. All rights reserved. |
| 主催 | 特定非営利活動法人埼玉映画ネットワーク |
| 共催 | 公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団(埼玉会館) |
| 料金 (税込) |
【全席自由】 |
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