Vol.114
2025年4月号
埼玉会館
2024年9月
10日(火)10:30/14:30/18:30
【問い合わせ先】 埼玉映画ネットワーク048-762-9407
※前売券なし・当日現金支払いのみ・全席自由・各回入替制・整理券制
◎14:30の回終了後に、アフターセミナーあり。
カール・マルクスの伝説の娘エリノア その知られざる激動の半生を初映画化
19世紀を代表する哲学者、経済学者カール・マルクスの末娘エリノア・マルクス。父の偉業を支えながら、女性や子どもたち、労働者の権利向上のため生涯を捧げ、43歳の若さでこの世を去ったエリノアの、次代を先駆けた女性活動家としての知られざる激動の半生を初めて映画化したのが本作『ミス・マルクス』だ。
父親譲りの政治活動家、また「資本論」の英語版の刊行を手掛け、ギュスターヴ・フローベール、ヘンリック・イプセンらの戯曲を翻訳した演劇人としても知られた彼女の生涯はしかし、矛盾と悲劇に満ちたものだった。
1883年、イギリス。最愛の父を失ったエリノアは、劇作家、社会主義者のエドワード・エイヴリングと出会い恋に落ちるが、不実なエイヴリングへの献身的な愛は、次第に彼女の心を蝕んでいく。フェミニストであったエリノアが、なぜエイヴリングのような男に生涯尽くしたのか。それは大いなる謎だろう。本作を観ながら観客は何度も、この疑問を心で唱えるに違いない。エイヴリングへの愛と政治的信念の狭間で徐々に引き裂かれていく彼女の姿が、一層せつなく胸に迫って来る。
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2020年ヴェネツィア国際映画祭2冠 主演ロモーラ・ガライ 史上最高のパフォーマンス
主人公エリノアに扮するのは『エンジェル』(07)、『つぐない』(07)のロモーラ・ガライ、エイヴリング役に『戦火の馬』(11)のパトリック・ケネディほか英国を代表する実力派俳優が集結。監督・脚本を手掛けたのは、イタリア出身のスザンナ・ニッキャレッリ監督。ヴェネツィア国際映画祭オリゾンティ部門作品賞を受賞した前作『Nico,1988』(17)で発揮した音楽センスをもって、エリノアの生き様にアメリカのパンクロック・バンド、ダウンタウン・ボーイズの楽曲を重ねた大胆な演出で、2020年ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門でベストサウンドトラックSTARS賞を含む2冠に輝き、2021年ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞11部門ノミネート、3冠受賞を果たしている。
監督スザンナ・ニッキャレッリは語る
現実の人々が必ずそうであるように、別の人間によって創造されたのではキャラクターたち、実際に生きて死んでいったキャラクターたちが、架空の人物のように首尾一貫していることは決してありません。私の目には、エリノアが理性と感情、身体と魂、感情と抑制、ロマン主義と実証主義、女性性と男性性の矛盾を体現しているように見えます。彼女の矛盾は、私たちが現実の生活で出会う矛盾と同じであり、それゆえに、解消されず、解決できないまま残るしかありません。そうした矛盾を、私はこの作品のあらゆる局面で描くように努めました。
音楽は脚本を書いているときから考えていました。彼ら(コンテンポラリー・パンクロック・バンド、ダウンタウン・ボーイズ)に限らず、ショパンなど、すべての音楽がすでに頭にありました。わたしにとって音楽はとても大切であり、ストーリーの単なる伴奏ではなく、キャラクターのひとつなのです。ダウンタウン・ボーイズのことは偶然知りました。ボーカルが素晴らしいエネルギーに溢れていて、エリノアの物語にぴったりだと思いました。まだ若いバンドですが実際にコミュニストで、そのアルバムにはコミュニズムの思想が感じられます。わたしはこの映画を完璧に時代ものとして扱うのではなく、時代を超えて現代に訴えるものにしたいと思いました。ですからダウンタウン・ボーイズのような若いエネルギッシュな歌声を必要としたのです。
—エリノアを演じたロモーラ・ガライについて
これまで演じてきた作品を観て、彼女ならこういう役を十分に牽引できると思ったのです。彼女の築いてきたキャリアにも惹かれました。でも重要だったのは、脚本を読んだ彼女と話し合ったことでした。ロモーラが語ったことを聞いて、彼女こそこの役に相応しいと感じたのです。とくに印象に残っていることをひとつ挙げるなら、わたしが「エリノアの人生はとても不可解だ」と言うと彼女は、「映画はプロが書くけれど、実際の人生はアマチュアに拠るものだ」と。それはその通りで、とても興味深いと思いました。
エリノア・マルクス(Eleanor Marx)1855-1898
イギリス、ロンドンで、マルクス家の6人目の末娘として生まれる。若い頃から「トゥッシー」のあだ名で呼ばれた。子どもの頃から政治に深い関心を抱き、10代から父の秘書として働く。労働者や女性の権利のための戦いに人生を捧げる一方で、父の遺作、そして「資本論」の英語版の刊行を手掛けた。また、幼い頃からウィリアム・シェイクスピアを始めとする文学や演劇への関心が深く、後に文学作品や演劇作品の翻訳も手掛けている。ギュスターヴ・フローベールの「ボヴァリー夫人」やヘンリック・イプセンの戯曲「海の夫人」や「民衆の敵」などを最初に英訳し、「人形の家」のノラ役を始め、その戯曲を俳優として演じることもあった。
エリノアの人生は、現代において女性であることがはらむ多くの矛盾や、女性解放の過程の複雑さを示している。ブルジョア階級、労働者階級を問わず、家庭内で女性が強いられる服従から、児童労働の残酷さに至るまで、いくつかの問題の緊急性を初めて明示したのが、エリノアと彼女の同志たちだった。
1883年、ロンドン、ハイゲイト墓地。カール・マルクスの埋葬式で、末娘のエリノアが父親の思い出を語る。父が17歳のとき、母イェニーと出会い、翌年ふたりは結婚したこと。生涯苦楽を共にし、信念を貫いたこと。少数の出席者のなかには、劇作家のエドワード・エイヴリングがいた。彼の戯曲に魅せられていたエリノアは、葬式のあと、自分から彼に声をかける—。
◎アフターセミナー
◇日時:2024年9月10日(火)14:30の回終了後
◇場所:埼玉会館 小ホール
◇ゲスト:小田原 琳さん(東京外国語大学 教授 /イタリア史、ジェンダー史専門)
日時 | 2024年9月 |
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会場 | 埼玉会館 小ホール |
作品情報 | 監督・脚本:スザンナ・ニッキャレッリ 出演:ロモーラ・ガライ、パトリック・ケネディ、ジョン・ゴードン・シンクレア、フェリシティ・モンダギュー、フィリップ・グレーニング 2020年/イタリア=ベルギー/107分/原題:Miss Marx/ビスタ
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主催 | 特定非営利活動法人埼玉映画ネットワーク |
提携 | 埼玉会館 |
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料金 (税込) |
【全席自由】 |
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