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【レポート】彩の国シェイクスピア講座Vol.2「『ヘンリー五世』徹底勉強会」 第1回 「ヘンリー四世と六世の狭間で」

2018年11月29日

11月10日(土)、彩の国シェイクスピア講座Vol.2『ヘンリー五世』徹底勉強会第1回「ヘンリー四世と六世の狭間にて」講師:河合祥一郎(東京大学教授)が開催されました。

 

【シェイクスピアの史劇について】
シェイクスピアの史劇には『ジョン王』や『ヘンリー八世』もありますが、大きくみて歴史劇四部作を2回書いたと言われています。

第1四部作…『ヘンリー六世』三部作、『リチャード三世』
第2四部作…『リチャード二世』、『ヘンリー四世』二部作、『ヘンリー五世』
(実際の歴史を見ると、
�『リチャード二世』、�『ヘンリー四世』二部作、�『ヘンリー五世』、
�『ヘンリー六世』三部作、�『リチャード三世』
の順番ですが、�『ヘンリー六世』三部作から書き始めたため、第1になっています。)

『ヘンリー四世』には、ハル王子(ヘンリー五世)とコミカルで滑稽な騎士のフォルスタッフとの話があるため、歴史劇でありながら喜劇的な側面が強くみえました。ところが、このフォルスタッフは、『ヘンリー五世』では登場しません。『ヘンリー五世』では純粋な歴史劇へと戻ります。

 

【アジンコートの戦い】
今回のお芝居で2点重要なものがあるとすると、1点目は百年戦争中の1415年にアジンコートの戦いでヘンリー五世が率いるイングランド軍がフランス軍に圧勝したという点です。この戦争は、英仏百年戦争と言われることがありますが、英仏という国家間の戦いではなく、ヴァロワ朝とプランタジネット朝(およびランカスター朝)の争いに際して、フランスの領主たちが二派に分かれて戦ったものです。アジンコートの戦いでは、イングランド12,000名 vs フランス60,000名(史実は7,000名 vs 20,000名)の圧倒的な数の差でも、長弓隊を用いて圧勝します。この戦いでフランスが負けたため、ヘンリー五世の子孫にフランスの王位継承を後押しする形となりました。

 

【多声性について】
この劇には、ヘンリー五世が話すキングス・イングリッシュだけではなく、スコットランドやウェールズ、アイルランド、フランスと、様々な国語や方言を使う人が登場します。
当時のお客さんも馴染みのない訛りや外国語はわかりません。聞いていてよくわからないということが重要なのです。……(中略)……このお芝居は上演史を見ても国威を発揚させるために上演されてきたため、愛国主義な面が強く見えてしまいますが、その中には話す言葉すら違うたくさんの人々がさまざまな考え方をしていて、必ずしもすぐに理解し合うことはないということがこのお芝居で重要な部分になります。

 

***

ほかにも家系図を使い『リチャード二世』からの流れを追ったり、『ヘンリー四世』で仲の良かった仲間に『ヘンリー五世』では急に冷たくなった理由など、興味深い話をしていただきました。


第2回は11月24日(土)に昨年も登壇いただいた北村紗衣先生をお迎えして、「知らないようで慣れ親しんでいる『ヘンリー五世』の世界〜影響と受容」になります。

 


 

講師プロフィール

河合祥一郎(かわい・しょういちろう)
彩の国さいたま芸術劇場シェイクスピア企画委員会委員長。東京大学教授。角川文庫からシェイクスピア戯曲の新訳を刊行するほか著書多数。主著に『ハムレットは太っていた!』(サントリー学芸賞受賞)など。蜷川幸雄演出『ヘンリー四世』『ヘンリー六世』の構成も手掛けた。


 

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