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彩の国さいたま芸術劇場 |

音楽

「次代へ伝えたい名曲」 第9回 竹澤恭子 ヴァイオリン・リサイタル 出演者からのメッセージ

2016年9月15日

「知られざる名曲への挑戦」
 

名曲との出会いには様々な形があると思います。言わずと知れたいわゆるメジャーな名曲は、知らず知らずのうちにそこにあり、気がついたら自然に耳の中に響いている、そんな気がしますが、知られざる名曲は、この世の中に存在する膨大なレパートリーの中にひっそりと眠っていて、眠りを解いてくれる魔法使いを今か今かと待っているように思います。そして、様々なきっかけで世に出て行くことになるのですが、この魔法使いとなる演奏家がその作曲家、作品の魅力をふんだんに発揮できるか否かで息を吹き返すことができるのかが決まってしまう。まさに責任重大です。
今回演奏する作品は、一般的に採り上げられることは少ないですが、私にとって、それぞれの作品との出会いには鮮烈な印象があり、感性にたくさんの刺激を与えてくれたものばかりです。共演してくださる児玉桃さんは繊細な耳と素晴らしい音楽的センスを持つ素敵なアーティストですので、欲張ってチャレンジングなプログラムにしました。
衝撃的なオープニングを持つプーランクのソナタは、フランスの女流ヴァイオリニスト、ジネット・ヌヴーが委嘱した作品で、若くして銃殺されたスペインの作家ガルシア・ロルカに捧げられました。第二次世界大戦の真っ只中で書かれたこの作品には、軍隊の行進であったり、銃殺音を暗示させる響きがあったりとプーランクの音楽には珍しい、包み隠さない荒々しさの中に戦争に対するメッセージがこめられているかのようです。続くベルギーの作曲家ルクーのソナタは、ヴァイオリンを最も美しく響かせ歌わせるという、彼の理想とする音への感性が伝わって来るような魅力的な作品です。
デュビュニョンは今、世界でも最も活躍する若手作曲家。私がパリに拠点を移した折に友人を介して出会い、後に私が審査員を務めたロン・ティボー国際コンクールでは、コンテンポラリー作品として彼の作品が採り上げられました。今回演奏する小品2曲は、非常に繊細で色彩豊かな神秘的な作品です。最後はバルトークのソナタ。私にとってバルトークは、今までの音楽人生の中でも大きな刺激を与えてくれた大切な作曲家の1人です。力強い生命力を感じさせる彼の音楽のエネルギーは、私の体に共鳴し、溢れんばかりのパワーを生みだしてくれます。ヴァイオリン・ソナタ第1番は、彼の作品の中でも和声上、構成上共に非常に複雑で、技術的にもピアノ、ヴァイオリン両者にとって挑戦的です。それだけに、この曲に潜む大地を揺るがせるような力強さに惹かれ、表現意欲をかき立てられる、取り組みがいのある作品です。今回、共演者の児玉桃さんからも強いリクエストがあり、是非にと採り上げました。
プログラム全体として非常にバラエティーに富み、弾きがい、聴きがいのある内容になったかと思います。これらの作品と皆様の出会いが素敵なものになりますよう、思いを込めて演奏させていただきたいと思っております。   

竹澤 恭子
 


 

なかなか演奏されない20世紀後半以降のヴァイオリンとピアノの名曲を尊敬する恭子さんと演奏させていただけて光栄です。
今回のプログラムでは曲の背景や音楽言語はもちろんのこと、ヴァイオリンとピアノの役割がそれぞれの作品で違うように思います。たとえば、ルクーやプーランクのように、どちらかというと、音楽史を振り返る作曲家と、バルトークのように、未来に目を向けている作曲家がならんでいることが、私にとって興味深いです。
24歳の短い人生の中で書かれた、ルクーのソナタは、ハーモニーが思いがけず様々に変わってゆき、ピアノはヴァイオリンに対して絨毯のように多彩な土台を作ります。また、ピアノがメロディーを奏でる時には2つの楽器が会話しているようです。
それに対して、バルトークは、2つの楽器が独立した世界をもっていて、それが時に絡み合い、ひとつになったりするように感じます。
どの曲に関しても、ピアノはとてもリッチで、時には複雑に書かれていますので、それをヴァイオリンとどのようなバランスをとるかはとても難しいですが、恭子さんのような素晴らしい音楽家と演奏できると、沢山の発見があると思います。リハーサルが楽しみです!

児玉 桃


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