Vol.120
2026年4月号
埼玉会館
2026年7月
17日(金)10:30/14:30/18:30
【問い合わせ先】埼玉映画ネットワーク 048-762-9407
※前売券なし・当日現金支払いのみ・全席自由・各回入替制・整理券制
◎7/17(金)14:30の回終了後、アフターセミナー開催!
「愛する人にありのままの自分を受け入れてもらう
人生においてこれほど美しいことがあるだろうか」
—マリヤム・トゥザニ監督

『モロッコ、彼女たちの朝』のマリヤム・トゥザニ監督最新作
夫婦の愛と決断の物語は、2022 年カンヌ国際映画祭国際映画批評家連盟賞受賞
2021 年、日本初公開されたモロッコ長編映画『モロッコ、彼女たちの朝』(19)は、異国情緒漂うカサブランカの旧市街を舞台に、臨月の未婚女性というモロッコのタブーを取り上げた衝撃のストーリーで大ヒットを記録した。ホブスにムスンメン、ルジザなど、モロッコの伝統パンの登場もパン好きの間で大きな話題になった。
モロッコの知られざる一面を日本に伝えたマリヤム・トゥザニ監督が、最新作で取り上げたのは民族衣装のカフタンを作る仕立て屋だ。カフタンとは結婚式や宗教行事などフォーマルな席に欠かせない伝統衣装で、コードや飾りボタンなどで華やかに刺繍されたオーダーメイドの高級品だ。母から娘へと受け継がれる着物のような存在だが、安価で手早く仕上がるミシン刺繍が普及した現在、手間暇かかる手刺繍をほどこすカフタン職人は貴重な存在となっている。トゥザニ監督は伝統を守る仕立て職人の指先にレンズを向け、滑らかなシルク地に刺繍する繊細な手仕事をクローズアップ。
消えゆく伝統工芸の美しさを伝える一方で、本作では男性の生きづらさを生むタブーに踏み込み、前作以上に挑発的なラストとした。戒律と法律が異性愛しか許さないモロッコ社会には、真の自分を隠して生きる人々がいる。伝統を守る仕事を愛しながら、自分自身は伝統からはじかれた存在と苦悩する1人の男、ハリムとその妻のミナが、本作の主人公だ。前作のリサーチ中に出会った美容師の男性からインスピレーションを受けたと明かすトゥザニ監督は、愛したい人を愛し自分らしく生きる美しい物語に昇華させた。
センシティブな問題を国際社会に紹介した本作は、2022 年カンヌ国際映画祭「ある視点部門」に出品され、国際映画批評家連盟賞を受賞。さらに、2023年米アカデミー賞®モロッコ代表として国際長編映画賞のショートリスト(最終候補15本)にも選出されるなど、国際的に高い評価を得ている。出演は『モロッコ、彼女たちの朝』(19)で、最愛の夫の死に沈むアブラを演じたルブナ・アザバル。死期迫るミナを体現するために過酷なダイエットを行い、最期の瞬間まで夫に愛と勇気を捧げる妻を熱演する。ミナとの別れを受けとめきれずに立ちすくむハリムには、『迷子の警察楽隊』(07)のサーレフ・バクリ。内なる情熱と本心を隠す悲しみを、吸い込まれるような瞳で訴えかける。複雑な夫婦の愛にさざ波を起こす助手のユーセフには、本作が映画初出演のアイユーブ・ミシウィ。



ミシンもラジオもない静かな工房に、ある日、若い職人が現れた。
モロッコ、旧市街の片隅で3 人の想いが愛を紡ぐ、希望の物語
モロッコ、海沿いの町、サレ。旧市街(メディナ)の路地裏で、ミナ(ルブナ・アザバル)とハリム(サーレフ・バクリ)の夫婦は小さな仕立て屋を営んでいる。家業を継いだハリムは女性を美しく包むカフタン作りの伝統を守り続けてきた。生地とデザインに合わせてより紐を手作りし、複雑なコード刺繍もすべて手縫いで行う。ミシンは使わない。ともすれば時代遅れとされる手仕事へのこだわりは、芸術的で繊細なカフタンを誕生させてきた。夫の技術と人柄に惚れ込むミナは、完璧を求めるあまり作業が遅れがちなハリムを急かしつつ、完成を心待ちにする女性たちとのやりとりを楽しんでいた。
ある日、2人はユーセフ(アイユーブ・ミシウィ)と名乗る若い男を助手として雇い入れる。より紐作りも刺繍も慣れた手つきでこなし、古い手刺繍を愛でる審美眼もある。ハリムは彼の才能を見抜き、ぺトロールブルーのサテンを使う豪奢なカフタン制作に参加させることにした。生地に合わせた糸の選び方や裁断のコツ、生地に負担をかけない刺繍針の刺し方など、完璧な美を裏打ちする技術を熱心に教える。ハリムの温かなまなざしを受けとめるユーセフに、冷たい視線を送るミナがいた。
ミナには時間がなかった。25年連れ添ったハリムと楽しい思い出を残そうと、これまで我慢していたことに挑戦してゆく。ハリムと一緒に街角のカフェでミントティーを飲み、煙草を燻らせてみる。夫の技術に敬意を払わない客には毅然と対応する。なにもない日に手間暇のかかるごちそうを作ってハリムを驚かせる。そして、繊細な指先で髪を洗ってもらう。ハリムに甘えることでミナは日々強まる痛みに耐え、何気ない時間を2人で過ごす幸せを噛みしめていた。
ハリムにとってミナは最大の理解者であり、自分を守ってくれる母のような存在だ。内向的なハリムが仕立屋としてやってこれたのも、ミナがいてこそ。大切なパートナーを失う不安を振り払うように、ハリムはぺトロールブルーのカフタン作りに没頭する。しかし、そばで見守るユーセフは気づいていた。ハリムがひた隠す葛藤の理由に……。
◎アフターセミナー
◇日時:2026年7月17日(金)14:30の回終了後
◇場所:埼玉会館 小ホール
◇ゲスト:佐野 光子 さん(アラブ映画研究者)

| 日時 | 2026年7月 |
|---|---|
| 会場 | 埼玉会館 小ホール |
| 作品情報 | 監督・脚本:マリヤム・トゥザニ 出演:ルブナ・アザバル、サーレフ・バクリ、アイユーブ・ミシウィ ほか 2022 年/フランス、モロッコ、ベルギー、デンマーク /アラビア語/122 分/ビスタ/カラー/5.1ch/英題:THE BLUE CAFTAN/字幕翻訳:原田りえ 提供:WOWOW、ロングライド 配給:ロングライド © LES FILMS DU NOUVEAU MONDE – ALI N’ PRODUCTIONS – VELVET FILMS – SNOWGLOBE |
| 主催 | 特定非営利活動法人埼玉映画ネットワーク |
| 共催 | 公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団(埼玉会館) |
| 料金 (税込) |
【全席自由】 |
|---|
MOVIE Information
SOCIAL NETWORKING SERVICE