Vol.116
2025年8月号
彩の国さいたま芸術劇場
2025年11月
12日(水)10:30/14:30
13日(木)10:30/14:30
14日(金)10:30/14:30
15日(土)10:30/14:30
16日(日)10:30/14:30
(1日2回、計10回上映)
※前売券なし・当日現金支払いのみ・全席自由・各回入替制・整理券制
◎15日(土)14:30の回終了後、アフターセミナー開催!
【問い合わせ先】埼玉映画ネットワーク 048-762-9407
世界的ベストセラー小説の映画化
アカデミー賞プロデューサー(『スペンサー ダイアナの決意』『ナチュラルウーマン』)が贈る
心揺さぶる感動の実話
ある日突然、最愛の人を奪われてしまったら、あなたならどうしますか?
2015年11月13日金曜日の朝。ジャーナリストのアントワーヌ・レリスは息子のメルヴィルと一緒に、仕事に急ぐ妻のエレーヌを送り出した。息子のために健康的な朝食を手作りして体調管理に気を配り、おしゃれでユーモアのセンスもある。最高の母であり、最愛の妻が、突然、天国へ行ってしまった。そんな時でも息子はお腹を空かせ、砂で遊び、絵本の読み聞かせをねだる。誰とも悲しみを共有できない苦しみと、これから続くワンオペ育児への不安をはねのけるように、アントワーヌは手紙を書き始めた。妻の命を奪ったテロリストへの手紙は、息子と二人でも「今まで通りの生活を続ける」との決意表明であり、亡き妻への誓いのメッセージ。一晩で20万人以上がシェアし、新聞の一面を飾ったアントワーヌの「憎しみを贈らない」詩的な宣言は、動揺するパリの人々をクールダウンさせ、テロに屈しない団結力を芽生えさせていく。
本作は、家族3人で幸せに暮らしていたアントワーヌが、テロ発生から2週間の出来事を綴った世界的ベストセラー『ぼくは君たちを憎まないことにした』の映画化である。最愛の人を、予想もしないタイミングで失ったとき、その事実をどう受け入れ、次の行動に出るのか。アントワーヌは確信している、妻はいつもどこかから二人を見守っていると。
たった一人の言葉が世の中の声を変えていく
ヒーロー視しない演出が人間の弱さと強さを浮き彫りに
パリ中心部にあるコンサートホールのバタクラン。アメリカのバンド、イーグルス・オブ・ザ・デスメタルのライブ中に3人の男たちが1500人の観客に銃を乱射し、立てこもった。少し前には、パリ郊外のスタジアムで行われていたフランス対ドイツのサッカー親善試合や周辺のレストランで過激派組織「ISIL」の戦闘員が自爆テロを起こしていた。バタクランには、アントワーヌの妻、エレーヌと友人がいた。安否確認すらままならないカオスの中で、2日後に判明したのは友人は生き延び、エレーヌは犠牲となった受け入れがたい事実だった。
混乱するアントワーヌの内面を映画化したのは、マラソンに挑戦する老人たちをほのぼのと描くコメディ『陽だまりハウスでマラソンを』(13)のキリアン・リートホーフ監督。おばに勧められたアントワーヌの手記は、メルヴィンと同じ年頃の娘を持つリートホーフ監督の心を打ち、監督はすぐさま映画化を決断。ドイツ人の立場からフランスの悲劇を客観的に見つめ、平明な言葉で憎しみの連鎖を拒絶するアントワーヌに焦点を当てた。
主演は、『万能鑑定士Q -モナ・リザの瞳-』(14)で真贋の権威であるリシャール・ブレ役で綾瀬はるかと共演し、『エッフェル塔 創造者の愛』(21)にも出演する実力派ピエール・ドゥラドンシャン。負の感情と自らの言葉の間で苦悩する、感受性豊かなアントワーヌを熱演する。妻のエレーヌ役にはシンガーソングライターでもあるカメリア・ジョルダーナ。19年出演のアクション『レッド・スネイク』ではISILを征伐する女性特殊部隊の一員として出演している。お風呂と絵本が大好きなメルヴィルには、当時3歳だったゾーエ・イオリオ。子役コーチによる演技訓練や長時間にわたるリハーサルに耐え、ママの不在に悲しみの涙を流し、笑顔を忘れたパパを支える愛息を演じている。
無差別襲撃から1年後の16年11月12日。バタクランはエンターテインメントを愛する人々に支えられ、全面改装してスティングのコンサートで再オープンした。2023年現在も人気の会場として営業を続けている。
監督インタビュー
アントワーヌ・レリスの原作との出会いを教えてください。
おばに薦められて読み始めたら、最後まで一気に読んでしまった。きっと、私にもメルヴィルと同年代の娘がいるからだろう。感動したと同時に、もし、同じことが自分の身に起きたら……と不安に駆られた。家族がテロリストに命を奪われるなんて考えただけでも恐怖なのに、そのことが頭から離れなくなった。翌日、ちょうど共同脚本のヤン・ブラーレンやマルク・ブルーバウムとのミーティングで感動と戸惑いを共有しようと数段落を朗読したら、最後まで読み切っていた。二人が感動の涙を浮かべていたのを見て、映画化すべきだと確信したんだ。
脚本の執筆はどのように進めたのですか? アントワーヌから具体的なサポートはありましたか?
私はアントワーヌに2回会っている。1回目は映画化に向けてお互いを知り、信頼関係を築くためだった。その時、アントワーヌの元には世界中から映画化のオファーが押し寄せていて、彼は映画化について迷っていたんだ。私とプロデューサーのヤニーネ・ヤツコフスキは、たった2年前にアントワーヌ自身が体験した運命について聞かせてもらった。あれは映画監督のキャリアの中でも、最も感慨深い時間だった。その後、アントワーヌから、映画化に同意すると連絡があったんだ。私たちのアプローチと熱意に好意を抱いたのと、事件から少し距離があるドイツ人であることが決め手になったようだ。
半年後には私の共同執筆者であるマルクとヤンも同席して、アントワーヌ自身からバックグラウンドを説明してもらった。彼がパリ近郊の小さな町の出身で、都会に出たのは兄姉で彼一人だったこと。アントワーヌが自らを「ボボ」(ブルジョアでボヘミアン)と呼んでいるということもね。以前はラジオ業界のジャーナリストだったけど、今は小説を書いているということも。事実を再現するためにアントワーヌが積極的に伝えてくれたことに感謝している。そして、「これからは君たちの物語だよ」と私たちに告げ、それ以降は映画化には一切タッチせずに見守ってくれたんだ。
観客へのメッセージをお願いします。
私たちの愛は、究極的にはこの世界に存在する憎しみより強いということだ。たとえ、憎しみが私たちに大きな傷を負わせることがあってもだ。アントワーヌは、フェイスブックでのメッセージでこう宣言した。「私と息子は2人きりだ。でも世界中の軍隊より強い」これは私たちの希望だ。
2015年11月13日金曜日。アントワーヌ(ピエール・ドゥラドンシャン)の忙しい1日が始まった。ヘアメイクアーティストの妻エレーヌ(カメリア・ジョルダーナ)はコルシカ島への家族旅行より仕事を優先したいと心変わりし、1歳半を過ぎたばかりの息子のメルヴィル(ゾーエ・イオリオ)はお気に入りのぬいぐるみがいないと大騒ぎして、アントワーヌをイラつかせる。仕事先に急ぐ妻を見送り、息子を保育園に預けると、やっと一人の時間が訪れた。新作の執筆に取り掛かるが、アントワーヌの手は動かない。1日かけても1行も書けないスランプに陥っていた。
仕事から戻ったエレーヌは、友達のブリュノとバタクラン劇場で行われるイーグルス・オブ・デス・メタルのライブに出掛けるとおしゃれに忙しい。パリの町もフランス対ドイツのサッカーの親善試合に興奮している。メルヴィルを寝かしつけ、のんびりと読書するアントワーヌに、兄のアレックス、エレーヌの姉アニーからメッセージが送られてくる。あわててテレビをつけたアントワーヌはがく然とする。サッカースタジアム周辺とバタクラン劇場で同時多発テロが発生したというのだ——。
◎アフターセミナー
フランスの死生観等についてお話いただきます!
◇日時:2025年11月15日(土)14:30の回終了後
◇場所:彩の国さいたま芸術劇場 映像ホール
◇ゲスト:豊岡 めぐみ さん(フランス哲学専門)
上映日時 | 2025年11月 |
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会場 | 彩の国さいたま芸術劇場 映像ホール |
作品情報 | 監督・脚本: キリアン・リートホーフ 出演:ピエール・ドゥラドンシャン、カメリア・ジョルダナ、ゾーエ・イオリオほか 2022年/ドイツ・フランス・ベルギー/フランス語/102分/シネスコ/5.1ch/原題: Vous n’aurez pas ma haine/英題:YOU WILL NOT HAVE MY HATE /日本語字幕:横井和子 提供:ニューセレクト/配給:アルバトロス・フィルム 後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ ©2022 Komplizen Film Haut et Court Frakas Productions TOBIS / Erfttal Film und Fernsehproduktion |
主催 | 特定非営利活動法人埼玉映画ネットワーク |
共催 | 公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団(彩の国さいたま芸術劇場) |
料金 (税込) |
【全席自由】 一般1,100円/小中高生600円*(いずれも税込) *学生証を確認する場合がございます。 |
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