2025年8月
15日(金)10:30/14:30/18:30
【問い合わせ先】 埼玉映画ネットワーク048-762-9407
※前売券なし・当日現金支払いのみ・全席自由・各回入替制・整理券制
◎14:30の回終了後、アフターイベント開催!
やられたら、やりかえす? それでいいの? —「平和の壁」に分断された街、北アイルランド・ベルファスト。不安定で不透明な世界を生きる子どもたちとケヴィン校長の「対話」の授業。
北アイルランド、ベルファストにあるホーリークロス男子小学校。ここでは「哲学」が主要科目になっている。エルヴィス・プレスリーを愛し、威厳と愛嬌を兼ね備えたケヴィン校長は言う。「どんな意見にも価値がある」と。彼の教えのもと、子どもたちは異なる立場の意見に耳を傾けながら、自らの思考を整理し、言葉にしていく—。
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世界を魅了する!北アイルランド版『ぼくの好きな先生』
北アイルランド紛争によりプロテスタントとカトリックの対立が長く続いたベルファストの街には「平和の壁」と呼ばれる分離壁が存在する。1998年のベルファスト合意以降、大まかには平和が維持されているが、一部の武装化した組織が今なお存在し、若者の勧誘に余念がない。争いの記憶は薄れやすく、平和を維持するのは簡単ではない。その困難はケヴィン校長と生徒たちの対話の端々にも現れる。
宗教的、政治的対立の記憶と分断が残る街で、哲学的思考と対話による問題解決を探るケヴィン校長の大いなる挑戦を映画化したのは、アイルランドで最も有名なドキュメンタリー作家のナーサ・ニ・キアナンと、ベルファスト出身のデクラン・マッグラの二人。およそ2年に及ぶ撮影期間中にパンデミックが起こり、インターネット上のトラブルという新たな問題が表面化するなど、子どもたちをめぐる環境の変化も捉えている。ケヴィン校長と生徒による微笑ましくも厳粛な対話がニコラ・フィリベールの『ぼくの好きな先生』を彷彿とさせ、国内外の映画祭で多くの賞を受賞した注目作!
■北アイルランドについて
イギリス(連合王国)を構成する一地域でアイルランド島の北東部を占める。1920年代にアイルランドがイギリスから独立し、北アイルランドと分離された。それ以来、プロテスタントとカトリックとの間で、宗教的、政治的対立が繰り返され、1960年代後半からは武力闘争化し、多くの命が失われた。1998年4月10日にベルファスト合意が締結されたが、暴力が完全に鎮火したわけではなく、現在も街の至る所にプロテスタント地区とカトリック地区を隔てる分離壁(通称「平和の壁」)があり、その周辺では時おり衝突が起こっている。首都であるベルファストには人口の約4分の1が集中する。
■ホーリークロス男子小学校
ベルファスト市北部、アードイン地区の中心地に位置するカトリック系の小学校。4歳から11歳までの男子が通う。密集する労働者階級の住宅街に北アイルランド宗派闘争の傷跡が残るこの地域は、混沌とした衰退地区であり、リパブリカンとユニオニスト(注1)の政治的対立により、地域の発展が遅れている。犯罪や薬物乱用が盛んなこの街の絶望感は、ヨーロッパで最も高い青年や少年の自殺率に反映されている。学校を囲む高い壁には鉄条網が張られ、壁には政治的な落書きや壁画が描かれている。2001年には姉妹校のホーリークロス女子小学校の子どもたちが地元のロイヤリストに通学路で脅迫される事件が起き、世界中のメディアで報道された。この事件によって、ホーリークロス男子小学校の教師も殺害予告を受けることになった。
(注1)アイルランド全島による共和国【リパブリック】独立派と、北アイルランドとブリテンの連合【ユニオン】維持派
ディレクターズノート
■共同監督:ナーサ・ニ・キアナン
観察映画作家(observation filmmaker)としての私のプロセスは常に、輪に加わりコミュニティの一員となり、自分を傍観者としてではなく、グループの一人として位置づけることです。幸運なことに、ケヴィンと彼のチームはデクランと私にその権利を与えてくれ、学校の世界に完全に浸ることを許してくれました。彼らが苦境にあるときでも、スタッフは私たちを歓迎してくれて、ユーモアを交えた寛容な精神が常に感じられたことに、私たちは本当に感動しました。
イギリスの欧州連合離脱(通称:ブレグジット)や新型コロナウイルスのパンデミックといった最も困難な時期にも撮影隊を受け入れてくれたのは、ホーリークロス男子小学校が生徒とともに、そして生徒のために成し遂げたことへの大きな誇りからくるものだと思います。
今、人類が直面しているすべての課題のなか、もし私たちが生き残る可能性があるならば、ケヴィンのマントラ「シンク、シンク、レスポンド!(考えて、考えて、答える!)」は、私にとってかなり良い最初のレッスンのように思えるのです。
■共同監督:デクラン・マッグラ
ベルファスト北部出身の映画作家として、私はしばしば、この地域の自殺問題に映画を通じてスポットライトを当てる義務があると感じ、その手助けができればと願っていました。「映画が誰かを助けることができる」と信じるのは、ナイーブな思い上がりかもしれません。
いずれにせよ、私は、アードインに哲学をもたらそうとするケヴィンの使命について、映画を作りたいと思いました。幸運なことに、私はアイルランドの優れたドキュメンタリー作家であるナーサ・ニ・キアナンとデビッド・レイン(本作プロデューサー)に、このプロジェクトに協力してもらうことができました。私とナーサは、ケヴィンやホーリークロス男子小学校のスタッフ、生徒たちから、学校やコミュニティの生活を観察し記録するために、ほぼ2年間過ごすことを許されたのです。
出来上がった映画が、教育の力を示し、そして紛争後の社会が過去の束縛から解放され、若い世代が古人の考えを用いて自分たちの未来を作ることができるという希望を示す、心温まる高揚感のあるものになればと願っています。
人生は正解のない問いの連続 考えて、考えて、歩む
北アイルランド、ベルファストにあるホーリークロス男子小学校。ここでは「哲学」が主要科目になっている。エルヴィス・プレスリーを愛し、威厳と愛嬌を兼ね備えたケヴィン校長は言う。「どんな意見にも価値がある」と。彼の教えのもと、子どもたちは異なる立場の意見に耳を傾けながら、自らの思考を整理し、言葉にしていく。授業に集中できない子や、喧嘩を繰り返す子には、先生たちが常に共感を示し、さりげない対話を持ちかける。自らの内にある不安や怒り、衝動に気づき、コントロールすることが、生徒たちの身を守る何よりの武器となるとケヴィン校長は知っている。かつて暴力で問題解決を図ってきた後悔と挫折から、新たな憎しみの連鎖を生み出さないために、彼が導き出した1つの答えが哲学の授業なのだ—。
◎アフターセミナー
◇日時:2025年8月15日(金)14:30の回終了後
◇場所:埼玉会館 小ホール
◇ゲスト:池田 崇 さん | こてつ(子どものための哲学対話)代表
日時 | 2025年8月 |
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会場 | 埼玉会館 小ホール |
作品情報 | 監督:ナーサ・ニ・キアナン、デクラン・マッグラ 出演:ケヴィン・マカリーヴィーとホーリークロス男子小学校の子どもたち 日本語字幕:吉田ひなこ 字幕監修:西山渓 後援:駐日アイルランド大使館/ブリティッシュ・カウンシル カトリック中央協議会 広報推薦 配給:doodler 配給宣伝協力:エスパース・サロウ 宣伝:リガード 2021年/アイルランド・イギリス・ベルギー・フランス/英語/102分/カラー/16:9/5.1ch/ドキュメンタリー 原題:Young Plato |
主催 | 特定非営利活動法人埼玉映画ネットワーク |
共催 | 公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団(埼玉会館) |
料金 (税込) |
【全席自由】 |
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