2024年6月にスタートしたカンパニー・グランデ。初回に実施した近藤良平の「からだ発見アワー」に続いて、8~9月には各講師によるワークショップ・アラカルトを開催しました。
いくつかのワークを抜粋し、その内容を順不同でご紹介します。
新聞やゴミ袋など、日常に溢れるものを使って「音」を出すことからスタート。同じ素材ながら様々な音の出し方が発明され、早速即興セッションが繰り広げられました。
その後それぞれが持参した「音の出るもの」を使って即興演奏をしていきましたが、途中アイマスクを着用し目を使わずに周りの気配を感じて音を出してセッションする試みも。
「まわりの音をよく聞いて」「一緒にセッションする相手の意図を感じて」とメンバーに声をかけながら、講師の内橋さんもご自身の「ダクソフォン」と呼ばれる特別な楽器を取り出してセッションに加わり、会場の大稽古場は集中度高く、熱を帯びた空間となりました。
全員で大稽古場の床に横になり空中を見つめ、その後目をつむるところからスタート。講師の川口さんの語り掛ける言葉にメンバーは耳を澄ませ集中していきます。一度意識を身体から遠いところに持って行き、再び目を開いたときに自身が「感じる」ことにフォーカスする——自分の意思から離れ、空間や人に「動かされている」感覚を味わいながら、即興の動きを生み出していきました。
その後、新聞をリンゴの1本剥きの要領で細く割き1本のひも状に成形し、その後新聞をテープで繋げ、参加者全体がもろく不安定な素材で繋がっていくワークを。全員で息を合わせて、ひも状になった新聞をちぎれないように浮かせた瞬間、不思議な高揚感が生まれ、稽古場はじんわりとあたたかな空気に包まれました。
「こころおどる時」をテーマに影絵を製作していきました。ただし、自分の「こころおどる時」ではなく、ペアを組んだ相手からその人の「こころおどる時」の話を聞き、その内容を影絵にしていく、という点が少し特別。カンパニー・グランデのメンバー120名は、ほとんどが初対面同士ですが、それぞれの「こころおどる時」を聞き合い、その人となりが光に照らされて見えてくる、そのプロセスにメンバーも興味津々です。
ワークの最後は、いよいよ製作した影絵を壁やスクリーンに投影してみる「影絵セッション」の時間。それぞれのエピソードを影絵によって語られ、それぞれの「こころおどる時」が鮮やかに立ち上がっていきます。
ほぼ全員「ラップは初めて」のメンバーに対し、講師のDJみそしるとMCごはんさんは「話すこととラップは地続き」と語り、まずはビートに乗って会話することからスタート。
その後は、メンバーそれぞれが自身のスマートフォンを手に「自分の声」を録音して聞いてみるワークを。設定を様々に変えて、あらゆる感情の声を録音してそれぞれ聞いてみると、ラップにおける楽器=「声」の多彩さが見えてきます。
続いて、早口言葉などを参照しながら「ライム(=韻)」について理解を深め、いよいよメンバーはリリックを書いていきました。今回全員が取り組んだリリックのテーマは、食に関する自分の「こだわり」です。最後は全員でマイクリレーをしながら「こだわり」ラップを披露。「とにかく和食が好き」「蕎麦そのものより蕎麦湯が好き」など個々のこだわりがリズミカルに語られました。初めてのラップに身構えていたメンバーも、身近な素材をもとにラップをやってみることで、その面白さをたっぷりと体験するひと時となりました。
自己紹介とともに、「いつも朝飲むもの」をそれぞれ発表してみると、想像以上に色々な人がいることがわかり、一気に打ち解けた空気に。
その後稽古場を歩きながら、講師の島崎さんが「自分の中から湧きあがる風が気持ちよく吹くように腕を動かして」「胸に目がついていると思って、近くを見たり遠くを見たりしてみて」などのイメージを指示し、メンバーもそれに呼応していきました。
続いて「誰が一番遅く歩けるか」耐久レースを。①決して止まらない②目線はまっすぐ遠くを見る③呼吸を忘れずに のルールに従って、それぞれが「最もゆっくり進む」を試します。
その後は円や三角形などの図形をイメージした動きや、大きい・小さい、軽い・重い、柔らかい・固いなど対となるニュアンスのイメージを動きで見せていくワークを続け、最後には「自分が今日お昼に食べたもの」についてそれぞれが表現。味、食感、食べた時の感情など、様々な切り口で表現に取り組み、メンバーからは「身体はもちろん、頭も存分に使って動きにしていくなかで、不思議とどんどん身体が自由になっていく感覚があった」などの感想が生まれました。
冒頭ウォームアップでは「声のヨガ」に取り組みました。講師の中納さんのイントロダクションに従って、メンバーは想像を働かせながら声を重ねていきます。
続いて、与えられたテーマを声と身体で表現するワーク。「嵐」など掴みやすいテーマからスタートし、「安定した人生」「“お”が追いかけてくる」など、ユニークなテーマをメンバーは様々な方法を模索し、表現していきました。
その後小さなグループに分かれて短いメロディやリズムを作り、重ね合わせていくセッションを行い、「人の声」でできる表現の幅の広さを改めて感じました。それぞれの声に耳を傾け、ハーモニーを意識することで、まとまりのある音が生まれていきます。
最後には、数人ずつに音を割振り1オクターブの音を同時に鳴らす合唱に挑戦。独特な調和の取れた音が響いて、ワークは不思議な高揚感のうちに終了しました。
日本サッカー協会の社会貢献委員会委員長も務める、アーテイストの日比野克彦さんを講師に迎えたワーク。ワーク当日の深夜に開催が予定されているFIFAワールドカップ・アジア予選「日本VSバーレーン」試合に向けて、日比野さんがこれまでにも取り組んでいる「マッチフラッグ」作りのワークに取り組んでいきました。
マッチフラッグプロジェクトとは、日本と対戦する双方の国/地域のことを想い描きながら、両チームの選手たちがピッチ上で会い交えるように二つのナショナルフラッグを一枚の布の上で一つにして、サポーターの試合当日への想いをかたちにしていくもの。参加したメンバーも、最初こそ突然サッカーのお題が出たことに戸惑いがあったものの、グループ内でそれぞれの役割を自然と見つけて、黙々と作業を進めるうちに不思議な一体感が芽生え、ワークの最後にフラッグが稽古場に掲げられた時には、思わず、そこかしこで歓声が。一つひとつの小さな仕事が、大人数集の手によって集積されることで大きな作品になっていくことが実感でき、カンパニー・グランデとしてのクリエーションの可能性を感じるワークとなりました。