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彩の国さいたま芸術劇場 |

音楽

【埼玉アーツシアター通信】ピアノ・エトワール・シリーズVol.38 ベアトリーチェ・ラナ ピアノ・リサイタル

2019年12月12日

知性、情緒、技巧、
すべてが揃ったイタリアの新星

 

新進気鋭ピアニストが意欲的なプログラムを披露する「ピアノ・エトワール・シリーズ」。2019 年度最後に登場するのは、イタリア出身のベアトリーチェ・ラナ。モントリオール国際音楽コンクール優勝、ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクール銀賞で注目を集め、ただいま大躍進中のラナが披露するのは、彼女が心から愛する作曲家たちの作品。今後ますます活躍すること間違いなしのラナの“ 今”を聴き逃すな!

 

公演詳細はこちら

 

後藤菜穂子(音楽ライター) Photo Nicolas Bets

 

 

トリフォノフ、ユジャ・ワンと並ぶ
今注目の若手ピアニストのひとり

 

ベアトリーチェ・ラナ、とても聡明なピアニストである。
初めて会ったのは2年半ほど前、ちょうど《ゴルトベルク変奏曲》のディスクが出た頃だっただろうか。まだ20代に入ったばかりなのに、物事を冷静に見ていて、自らのピアニストとしてのキャリアについても成熟した考えを持っている点が印象的だった。「ピアニスト以外の道は考えたことがない」と言い切れる迷いのなさに、芯の強さを感じた。
今年1月には英音楽雑誌の『グラモフォン』誌に、トリフォノフやユジャ・ワンらと並んで、ピアノ界の新・黄金時代を代表する5人のピアニストに選ばれたが、並みいる若い世代のピアニストの中でもラナは特に知性と情緒と技巧のバランスが際立っているように思う。
初来日は2015年のラ・フォル・ジュルネ。続いて2017年にはトッパンホールでのソロ・リサイタルでバッハの《ゴルトベルク変奏曲》、そしてファビオ・ルイジ指揮NHK交響楽団とベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番を演奏した。3度目の今回、彩の国さいたま芸術劇場の「ピアノ・エトワール・シリーズ」に登場する。

 

バッハに惹かれ
シューマンを愛する

 

南イタリア、「長靴のかかと」と形容されるプーリア州レッチェに生まれ育つ。父はオペラのコレペティトール(伴奏ピアニスト)、母もピアノ教師という音楽一家で、6ヶ月の頃から母親の膝の上でピアノを弾いて遊んでいたという。
4歳の時、地元に開校したばかりのヤマハの音楽教室に通い始め、その後は地元の音楽院でピアニストのベネデット・ルーポに師事、対位法や作曲も学んだ。一方、数学が得意だったので高校は理系を選び、成績もよく、先生たちには学問の道を進められたそうだが、「たとえ医者になれたとしても、音楽家ほどは幸せにはなれなかったでしょう」とにっこり笑う。
18歳でモントリオール、20歳でクライバーンと名だたる国際ピアノ・コンクールで次々に成功を収め、デビューを果たすが、ワーナーからの初のソロ・アルバムに《ゴルトベルク変奏曲》を選んだことで一躍注目を浴びた。筆者は昨今の国際コンクールで多くの才能豊かな若手ピアニストを聴いてきたが、それでも彼女のような理知的かつ様式感に富んだバッハが弾ける奏者はめったにいない。
彼女自身はとにかく子どもの頃からずっとバッハが大好きで――なんと8歳の時にオール・バッハ・プログラムのリサイタルを開いたそうだ――「バッハを弾いている時はとても心地よいんです」とさらりと言う。数学が得意なので、バッハの音楽の知的な部分に惹かれるのかと思いきや、むしろそのスピリチュアルな面、その人間性に惹かれるのだという。「バッハの音楽には、人間性と神々しいほどの完成度が同居しています」
もう一人、ラナがこよなく愛する作曲家がローベルト・シューマン。クライバーン・コンクールでは、室内楽のラウンドでのピアノ五重奏曲、本選リサイタルでの《交響的練習曲》と、その成功を形作った重要なレパートリーだ。またピアノ協奏曲も得意としている。今回のリサイタルでは、25歳のシューマン――今のラナとほぼ同じ年齢!――が作曲した情熱のほとばしる野心的なピアノ・ソナタ第3番を取り上げるが、憧れとパッションにあふれる演奏が期待できそうだ。

 

華麗なテクニックと
切れ味鋭いリズム感に期待

 

リサイタル後半のテーマは「舞踊」だろうか。スペインの作曲家アルベニスの組曲《イベリア》はラナの最新のレパートリーだが、なかでも第3集は難曲ぞろいとされる。第2曲〈エル・ポーロ〉(アンダルシア地方の舞曲)に代表されるように南スペインの情緒とリズムが魅惑的だ。
そしてフィナーレを飾るのはストラヴィンスキーの《「ペトルーシュカ」からの3楽章》。バレエ・リュスのために作曲されたバレエ音楽から、のちに作曲家自身がピアノ用に編曲したものだ。
本作品は、この秋リリースされたばかりの最新のソロ・アルバムにも収められている。20世紀初頭にパリで作曲された作品を組み合わせたこのディスクには、そのほかストラヴィンスキーの《火の鳥》(アゴスティ編曲)、ラヴェルの《鏡》と《ラ・ヴァルス》という色彩に満ちた作品が並ぶ。
「私はかねてより20世紀初頭のピアノ音楽に強く惹き付けられてきました。劇的な変革の時代であり、それぞれの作曲家がそうした変化を自分なりの音の語法で表現してきました。これらの曲はこうした時代を映し出しているのです」と彼女は最近の『グラモフォン』誌に語っている。
《「ペトルーシュカ」からの3楽章》は、もともと大編成のオーケストラ曲をピアノ1台で弾くわけなので、当然難易度の高い作品であるが、ラナは華麗なテクニックと切れ味の鋭いリズム感でスケールの大きな演奏を聴かせ、ストラヴィンスキーのバレエの世界をヴィヴィッドな色彩で描いてくれることだろう。

 

(「埼玉アーツシアター通信Vol.84」P.14-15より)

 

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