撮影:宮川舞子

今の日本で俳優として生活できるようになるには、多くの場合、プロダクションに所属して収入を得ていかなければならない。そして、多くの興行が、知名度のある俳優を中心に組んで収入を確保している。これとはまた違った道を作れないかと考えている。たとえ無名の若者たちでも、適材適所のキャスティングで、いい演技をすることによって興行が成り立つという方法を確立したい。いい俳優を育てて、その俳優たちの演技を観たいためにお客さんが集まってくる。これが公共の劇場の大事な仕事のひとつだと思っている。正直、この中で本当に凄いのは2、3人だろう。そのぐらいの確率なんだ。でも、自分が若い時に、奇跡的にいい俳優が集団的に出てきたこともあるから、集団的に出てくることも可能性がないこともない。
 自分は若い時に新劇にいて、徹底的に受けた教育はスタニスラフスキーやブレヒト。それからアングラや外国でも活動した。ロンドンだと、ピーター・ブルックの本が共通の話題になるのが当たり前で、そういった演劇的教養の世界的レベルは当然あるわけだから、それをきちんと分かっていた方がいい。そういう俳優を育てていかないと、いつでも消費される俳優しか生まれない。集団によっては、個々の俳優をモノとして扱ったために、俳優を生み出さない集団もある。俳優の生まれない演劇なんて、演劇のある部分しか扱っていない。演出家や作家に、ただの消耗品として使われる俳優になるな、と思う。だから、どこの国に行っても、どの集団に行っても、どの現場に行っても、自立したクリエイティブな俳優として対応できるようになるための教育をきちんと受けたほうがいい。ここ、さいたまでいえば、ヤン・ファーブルやローザスとか世界最先端の前衛的なものもやって来るから、学ぶべきことはたくさんあると思う。それに、近代演劇の歴史というのを一通り経験した自分は、君たちにとっては手頃な老人なんだ(笑)。

歳をとっていく過程で、認識したり、体験したり、創造したり、生きてきたということが演技や演劇に反映できるのが一番正しいあり方だと思っているし、そういう演劇を作りたい。今、さいたまゴールド・シアターで、ケラリーノ・サンドロヴィッチさんと一緒に仕事をしているけれども、いろんな世代の優秀な人達、メソッドの違う人達と組みながら、優れた俳優が育たないかなというのが、僕の大きなテーマ。
 今日は、6割くらい洋服脱いだ感じ。僕をみんなに理解してもらって、そういうふうにして演劇を創ろうとしているんだろうな、と思ってもらいたい。皆と向かい合って、個と個で結びつきながら、俳優を育てるというとおこがましいけれど、手助けしようかなと思っているんだ。

(2009年3月3日・大稽古場)
撮影:宮川舞子